川崎市中原区の等々力陸上競技場で進められていた新メインスタンドの工事が終わり、3月13日に完成記念式典と関係者らが参列、内覧会が行われた。新しいメインスタンドは客席が従来より4000席増えるとともに、家族連れやグループなどのニーズに対応できるさまざまなタイプの客席を設けるなど設備も充実させ、モダンな外観と合わせてイメージを一新した。同競技場をホームグラウンドにしているサッカーJ1の川崎フロンターレが14日15時からホーム開幕戦としてヴィッセル神戸との対戦で初めて使用するほか、15日13時から17時(受け付け16時まで)まで、一般市民向けの見学会も催される。また、メインスタンド内には、多摩区にある藤子・F・不二雄ミュージアムの協力で、ドラえもんなどのおなじみのキャラクターのスポーツにちなんだ像も設置され、来場者を楽しませそうだ。
写真=新設されたメインスタンドの外観
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新メインスタンドは、鉄筋コンクリート造・プレキャストコンクリート造・鉄鋼造の6階建てで延べ床面積は21、853平方m、高さは旧スタンド(3階建て、約14m)の約2倍の29m。客席数は、旧スタンドより約4、000席増えて7,495席(Jリーグ開催時は7,281人)となり、競技場全体では27,495席(同26,232席)となった。
内部は、シートや天井など多くの場所にフロンターレカラーのブルーと黒が使われており、これまで以上に川崎フロンターレのホームスタジアムらしい仕上がりとなっている。
内部は、1階が選手、運営、関係者が利用するエリアで、選手関連ではシャワーの増設や、アイシングなどに使うタイル張り浴槽を4基新設するなど、これまでより充実させた。記者・カメラマン控え室、記者会見室も設置した。
2階は、パーティーなども開けるガラス張りの来賓ラウンジのほか、観客用のトイレは、観客席から緑色の壁で誘導する方法を採用、また、混雑を避けるために一方通行として出口が別に設けてある。また、カーテンを設けた着替えコーナーもある。
コンコースとつながる3階は通路を広くし、グッズや食べ物のショップを設置した。
客席は3階から6階までで、一般の客席のほか、さまざまな観戦スタイルを提供する「バラエティーシート」を備えているのが特徴だ。バラエティーシートは、自宅の居間風のソファーを置いた個室と、外側に客席があるグループボックスシート、家族や友人と楽しめる4人席・6人席のグループシート、ゆったり足をのばせるベンチ式の掘りごたつシート、子どもを遊ばせながら観戦できるキッズスペース、記者席と同仕様のカウンターシート、木製のテーブルが着いたパーティーシート、車いす席など7種類ある。6階には、東京タワーやスカイツリーも望めるスカイテラスやVIP用のスカイボックスが設られている。
メインスタンドの両脇にあった照明塔に換わって、屋根の前面にJリーグでは初のLED照明を採用している。このほか、太陽光発電装置や雨水を貯蔵してトイレの洗浄水に再利用、地中熱を利用する冷暖房を採用するなどエコにも配慮した。
メインスタンドの総工費は、当初の予算より約14億円増の79億3,500万円。
メインスタンドの工事に加え、サイドスタンド南側にも新たに大型の映像装置を設置した。
15時から来賓ラウンジで行われた記念式典には、福田紀彦川崎市長、川崎フロンターレの武田信平社長、川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムの伊藤善章館長らが参加した。福田市長が「市民の大きな願いで2012年12月から始まった工事が2015年のホーム開幕戦前日に間に合って良かった。地元の町会、フロンターレのサポーターなどさまざまな市民の協力で悲願のスタジアムができあがったことを感謝しています。中も外もすばらしいスタジアムです。明日はフロンターレのホーム試合、来月には日本を代表する陸上大会が開催されます。夢と希望がどんどん生まれる使い方がみんなで出来るスタジアムにしていきたい。また、藤子プロの キャラクターがお客様を出迎える川崎らしいスタジアムになりました」と挨拶した。
福田市長らによるテープカットに続いて、3階コンコースに作られた、ドラえもん、パーマン、のび太、エスパー魔美など藤子作品でおなじみキャラクターがサッカーに興じている「Kick off!」と名付けられたブロンズ像の除幕式が行われた。この像は、市内外から多くの市民が集まる競技場で川崎市の魅力を発信しようと企画されたもので、入場ゲートなど8箇所に高さ約30cmのブロンズ像が設置された。競技場のコンコースは、試合のない日でも入ることができるため、サッカーファン以外も楽しめる競技場の名物になりそうだ。
内覧会に参加した武田社長は「2008年に多くのサポーターや市民の署名運動から始まり、長い年月がかかったが、観客席などについて多くの要望を聞き入れてもらい、ようやく完成して感無量です。明日の開幕戦は絶対に勝って、皆さんの期待に応えたい」と喜んでいた。またサポーター代表として参加した山崎真さんは「客席数よりも、安全で快適なスタジアムにするため、通路を広くするなどサポーターの要望を多く聞き入れてもらえたて良かった」と笑顔だった。
メインスタンドの新築は、等々力競技場第1期整備として実施された。今回は、Jリーグスタート直後の1993年から1995年にかけて約110億円を投じて芝生スタンドから固定席などに変えた増築工事の市債の返済が終わっていないためにサイドスタンド、バックスタンドの改築は見送られたが、2016年度に競技場全体の事業再評価の後に、第2期工事を行うことも検討されている。