第93回天皇杯全日本サッカー選手権大会の準決勝が12月29日に国立競技場(東京都新宿区)で開かれ、FC東京はサンフレッチェ広島と対戦した。試合はリーグ戦でV2を果たした広島相手にFC東京も一歩も譲らず互角の試合を展開、延長戦を含め両チームとも120分間無得点でPK戦にもつれ込んだ。先に2本失敗した広島がGK西川周作(#1)の攻守の活躍でピンチを跳ね返し、5対4で奇跡的に勝利を引き寄せて決勝に進出。FC東京は後一歩のところで涙をのんだ。
もう一つの試合、横浜F・マリノス対サガン鳥栖戦はマリノスが2対0で勝ち、決勝にコマを進めた。元日決戦は、リーグ優勝の広島と準優勝の横浜F・マリノスの対決となる。
写真=PK戦で、4人目のキッカーに志願し、PKを決めた広島GK西川周平(撮影 : すべて山本真人)
FC東京は準決勝進出が5回目で、J2だった2011年以来2年ぶり2回目の優勝をめざした。一方の広島は、前身の東洋工業時代を含め準決勝進出は27回目。1965年と1969年に優勝しているが、Jリーグ発足後は4回決勝に進んだものの敗れており、いまだ優勝の経験はなく、リーグ覇者の意地をかけた負けられない試合だ。
国立競技場は、FC東京側ゴール裏は地元東京のサポーターで埋め尽くされ第2ホームのような雰囲気。広島側も旗や大きなフラッグ、チームカラーのタオルを振るサポーターも多く、26,709人の観客が試合の行方を見守った。
試合は、両チームともワントップと同じシステムの慎重な立ち上がりで始まり、互いに前線にボールを運ぶが、リスク管理を徹底してFWに決定的な仕事をほとんどさせず、前半を0対0で折り返した。
後半もこの状態がしばらく続き、互いに何度かあったチャンスもGKの好守でしのいだ。延長を意識して広島が86分にFW佐藤寿人(#11)を下げてMF野津田岳人(#24)を投入、FC東京も89分にFW渡邉千真(#9)をMF石川直宏(#18)に替えた。延長戦に入ってからも互いに攻撃的な選手を入れてゴールをこじ開けようと試みたが、不発に終わった。
PK戦はFC東京のサポーターが陣取る側でFC東京の先行で行われた。FC東京は3人目まで成功、広島は最初のキッカーがFC東京GK塩田仁史(#1)に止められ、3人目が枠を外す絶対絶命のピンチに陥ったが、ここからこの試合のドラマの始まりとなった。広島GK西川は、東京4人目MF三田啓貴(#36)のPKを止めると、自ら4人目のキッカーを志願、観客をわかせた。西川は客席が静まるのを待って落ち着いてPKを決め、東京5人目のMF長谷川アーリアジャスール(#8)のPKをセーブ。このプレーでFC東京に傾きかけた流れを五分に戻した。緊張が続く中6人目はどちらも成功、7人目の石川が西川にブロックされると広島側サポーターから喜びの旗が振られ、広島最後のキッカーとなった野津田が成功すると大きな喚声が上がった。
試合後の会見では、両軍の監督から「どちらが勝ってもおかしくない試合だった。選手たちはよく戦った。サポーターに感謝したい」と長時間の白熱した試合を戦った選手たちにねぎらいを口にしていた。
決勝戦がリーグ優勝の広島と準優勝の横浜Fの対戦となったため、ACL(アジアチャンピオンズリーグ)にリーグ戦4位のセレッソ大阪が繰り上がりで出場権を獲得した。