ダウン症のアーティスト岩崎菜摘子さんがふるさと狛江で個展


121108natumiko01狛江市に住むダウン症のアーティスト岩崎菜摘子さん(35)が、11月9日から13日まで小田急線狛江駅前の泉の森会館ギャラリーで4回目の個展を開く。岩崎さんが自分が育った狛江で個展を開くのは初めてで、会場には数十色の水彩サインペンを駆使した約40点の作品と岩崎さんの絵をモチーフにして作られたバッグ、Tシャツ、絵はがきなども展示する。

写真=岩崎菜摘子さんと作品(はがき、バッグ)



121108natumiko05

作品「森と空」

「『菜摘子展』〜逃げないで!光の粒たち 私が描くまで〜」と題された個展の展示作品の多くは、水性サインペンで描いた点描の具象画や抽象画で、過去の個展で展示した小ビン、小鳥、花などさまざまなシリーズのほか新作も飾られている。

岩崎さんが絵を描き始めたのは、世田谷区の私立和光小学校の高学年からで、自分のノートやクラスメイトのノートに水彩サインペンを使い、小さな点で埋め尽くすような絵を描いた。母親の暁子さん(70)は「級友のノートにまで書き、迷惑をかけると思ってサインペンを取り上げたこともありました。今、考えると授業内容が理解できなくなり、絵を描くことで孤独を埋めていたのでは」と約25年前を振り返った。
菜摘子さんは、その後狛江市立第一中学校身障学級を経て府中市の養護学校に通ったが、そのころはほとんど絵を描かなかったという。再び絵を描き出したのは養護学校卒業後に成城学園前のファーストフード店でパート勤務を始めてからのこと。障害を持つため勤務先で「覚えが悪い」「仕事が遅い」などと言われ、そうしたつらさを紛らわせるように菜摘子さんは帰宅後、こたつで仕事をする母親と向き合い絵を描き続けた。その後、都の障害者美術展にも出品するようになり何度か入選、2004年に奨励賞を受賞した。

121108natumiko04

作品「絶滅ヒトデ」

年賀状や暑中見舞いに使われた菜摘子さんの作品を知る暁子さんの友人の勧めで、2009年に台東区のカフェで初めて個展を開いた。独特の画法と色使いが評判となり2010年には渋谷区のテプコ・ギャラリーで個展を開いた。この間、公募で選んだ障害者アーティストの作品の著作権を管理し商品化する「エイブルアート・カンパニー」に登録、バックやカットソー、靴下などに商品化されたほか、雑誌の表紙などにも使われるようになった。
今回の個展は、新聞報道で菜摘子さんの存在を知った泉の森会館ギャラリー企画担当のスタッフが、狛江に住むアーティストを多くの市民に紹介したいと岩崎さんに働きかけ実現した。岩崎さん母娘は「かつての同級生や近所の方に見てもらえばうれしい」と話している。
展覧会の開館時間は10時〜18時。問い合わせは電話03-5497-5444泉の森会館ギャラリー。