川崎市民ミュージアムで「中村正義の《顔》展」:異才の日本画家の画業紹介した約80点

120915masayoshi01戦後の美術界を代表する画家のひとりとして知られる、川崎ゆかりの日本画家中村正義の個展が川崎市中原区の川崎市民ミュージアムで9月15日から開かれている。この「中村正義の《顔》展」は、来春公開予定のドキュメンタリー映画「父をめぐる旅−異才の日本画家中村正義の生涯」に合わせて企画されたもので、会場には初期の自画像から映画「怪談」のために製作された「源平海戦絵巻」、代表作の「顔」シリーズなど、その幅広い画業と足跡をたどることができる絵画や資料など約80点が展示されている。会期は10月14日まで。

写真=展示された作品を鑑賞する阿部市長ら

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テープカットをする(右から2人目から)中村倫子さん、阿部市長、近藤監督

中村正義は1924年に愛知県豊橋市で生まれた。画家を志して中村岳陵に師事、24歳で日展で入選、26歳で特選、36歳という異例の若さで審査員になるなど、日本画のホープとして将来を嘱望された。しかし、その翌年の1961年に川崎市麻生区細山に転居してアトリエを構える一方、日展を脱退、画壇に大きな波紋を巻き起こした。以後、それまでの画風を一変させ、力にあふれた筆致と大胆な色づかいで男と女、顔などのシリーズを次々と発表、高い評価を集めた。また、絵画の領域だけでなく映画や演劇、本の挿絵などにも活動の場を広げ、1964年の小林正樹監督の「怪談」で使われた源平海戦絵巻を描くほか、雑誌『20世紀』の表紙のために、三島由紀夫、福田赳夫、今東光といった当時の代表的な政治家や文化人の肖像を描き、新しい境地を開いた。さらに、浮世絵師写楽を独自の視点から研究して出版するなど、幅広い分野で多くの業績を残した。また、古い因習に縛られた画壇の変革に取り組んだ。
しかし、精力的な創作活動の陰で、10代の頃から結核やがんといった病いに悩まされ、1977年に肺がんのため、52歳の若さで死去した。
細山の自宅は父の遺志を継いだ長女の中村倫子さんが個人美術館に改装、「中村正義の美術館」として1988年に開館。倫子さんが館長として、中村画伯の業績を広く伝える運動や研究に取り組んでおり、中村正義の絵を愛する人々がいまも多く訪れている。
今回の展覧会は、生前に中村正義と親交のあった映画監督の武重邦夫さんが、中村画伯をテーマにしたドキュメンタリー映画の製作に3年前から取り組み、それに合わせて開催が実現したもの。
初日の9月15日には、阿部孝夫市長、映画の共同監督の近藤正典さんらによるオープニングセレモニーが催され、記念のテープカットを行った。
中村倫子さんは「ミュージアムでの展示は2回目で、これと映画をきっかけに地元の川崎市をはじめ多くの人にその業績を知ってもらえればうれしい」と話していた。
期間中は、16日10時30分から映画「怪談」上映、13時30分武重監督と映画「日本の華 浮世絵肉筆」の小川益王監督のトークショー、15時「父をめぐる旅」上映、22日・23日14時ワークショップ「中村正義から、つくる」、29日ベビーカー・ツアー、29日・10月6日・13日ギャラリートークが催される。
観覧料は一般600円、学生・65歳以上400円、中学生以下無料。
開館時間は9時30分〜17時30分(入館は16時30分)。休館は月曜日(祝日の場合は開館)。
問い合わせは電話044-754-4500川崎市民ミュージアム。
ホームページはhttp://www.kawasaki-museum.jp