第90回天皇杯全日本サッカー選手権大会・準々決勝の4試合が12月25日、熊谷陸上競技場など4会場で行われた。
来シーズンJ2に降格するFC東京は、J2から唯一ベスト8に残ったアビスパ福岡と対戦。前半に福岡のFW大久保哲哉のゴールで先行されたが、終了30秒前に途中出場のFW石川直宏のゴールで追いつき、延長戦でFW平山相太と石川が相次いでゴールを決めて3対2で劇的勝利を飾り、サポーターはクルスマスに大きなプレゼントをもらったように喜んでいた。
29日の準決勝は、FC東京が国立競技綬(東京)で15時から鹿島アントラーズと対戦、もうひと試合は、エコパスタジアム(静岡)で13時からガンバ大阪と清水エスパルスが対戦する。
写真=延長前半でゴールを決め喜ぶFC東京の平山相太(#13)
試合は、東京が初めて味わう降格ショックからの立ち直りと来季への意地を、一方、福岡は来季J1での戦いを見据えるという注目の対戦。会場には、両チームとも赤い帽子を被ったサンタ姿のサポーターが目についた。
攻撃的な立ち上がりを見せた東京は、早い段階でのチャンスを福岡の厚い守備に阻まれ、13分に一瞬のスキから自陣に前に運ばれたボールを福岡のFW大久保哲哉に決められて先制を許した。その後、FC東京は右サイドバックのDF中村北斗が17分に負傷退場してキム・ヨングンがピッチに入ったが、攻撃のリズムはつかめず、前半を無得点で折り返す。
後半、東京は福岡ゴールに迫るが、人数を掛けた福岡の固い守備にゴールが遠く、サポーター席から「意地見せろ」「シュートしろ」などの厳しい声が何度もあがった。来季のために自信を取り戻したい東京は、60分にFW大黒将志からFW鈴木達也に、73分にはMF米本拓司からケガ明けのFW石川直宏を投入。石川が流れを引き戻したが、気迫のこもる福岡の守備にゴールマウスが割れない。敗戦濃厚と思われたロスタイム終了間際に、石川が相手キーパーをかわして右足でゴールを決めて試合を降り出しに戻すと、東京のサポーター席からは大きな喚声がわき上がった。
延長戦で東京は、気落ちして足が止まった福岡の守備をつき、前半のビッグチャンスを外した平山が94分に追加点、4分後には石川がこの日2得点目ゴールを決めて試合をたたみかけた。福岡は、延長後半に気持ちを立て直してゲームキャプテンのDF丹羽大輝がゴールを決めたが、反撃はそこまでで終わった。
試合終了後、ピッチを半周してあいさつする東京のメンバーは、サポーターから投げ込まれたサンタやトナカイの帽子を被り、笑顔であいさつしていた。
東京の大熊監督は会見で「今シーズンを凝縮するような試合だった。ケガ明けで2回しか練習していないナオ(石川)の投入は難しかった。点入れられた反省もあるが、今は勝つことや追加点を取ることでチームに自信が生まれる。反省点はあるが前向きに捉えて、まずは次の準決勝を頑張りたいと」とほっとした表情で話していた。
写真(上から)=試合を決定する98分の石川(#18)のゴール、試合終了後に喜ぶ東京のサポーター