川崎市の人形作家が1930年代のアメリカを題材にした個展 : 狛江駅前の泉の森会館

100608ningyou02   川崎市多摩区登戸の人形作家・片岡多佳子さんが、1930年代のアメリカを舞台にしたハードボイルド小説に出てくる人物を想定した初の個展を小田急線狛江駅近くの泉の森会館2階ギャラリーで6月10日から14日まで開く。

写真=スーツにコート、革手袋を身につけた「殺し屋」の人形



「センチメンタル・クロウズ」と題するこの人形展に展示するのは8体。探偵、殺し屋、娼婦、研究を盗まれた男、逃げてきた女などすべて日の当たらない世界でひっそりと生きる人物だ。
アメリカの都会の裏町にたたずむ「ホテル・センチメンタル」のロビーに偶然居合わせた人という設定になっており、現実世界ではないが、小説世界を抜き出したような独特の存在感を漂わせる。 高さ約50cmの人形は、体の部分は合成樹脂粘土で制作、表情も豊かで、片岡さんが手縫いしたトレンチコート、スーツ、ドレスなどそれぞれの人物設定に合わせた雰囲気の衣装を身につけているのが特徴で、手作りのソファーなどに腰掛けている。

 
100608ningyou01  幼いころから物作りが好きだった片岡さんは、20代にイラストなどを描く仕事をしていたが、33歳の時に人形作家・四谷シモンのポスターを見て、人形作家を目指してシモンが主宰する人形教室に通い始めた。
外国のそっくりさん人形などを作って門下生とグループ展に何度か出品したこともある。しかし、自分の求めている作風とは違うと気づき約5年前に教室をやめ、試行錯誤を繰り返すうちに今回の人形展で使っている素材に出合い、色つけの素材もさまざま試した。
この間、片岡さんは作る人形についても考え、20世紀初頭のモノクロ映画やミステリー小説、ハードボイルド小説が好きだったことから、以前見た映画や読んだ小説に登場する人物を人形で表現することを思いついた。
人形の人物設定を考えてから樹脂粘土でボディーを作り着色、集めた本や写真などの資料を参考にして、その人物にふさわしい服を型紙を作って布を裁断し手縫いする。作品は1体完成するのに2、3カ月費やしたという力作ばかりで、展示された作品は約3年の間に創作したものだという。
片岡さんは「1930年代は、1929年に始まった世界恐慌が続く暗い時代で、不況のいまに通じるところがあります。人形は、レイモンド・チャンドラーの有名な言葉『強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない』という言葉をモチーフに作ったので、影を背負った人物のなかに優しさを感じてもらえればうれしい」と話している。
 同展は14日までの午前10時から午後6時(14日は午後5時)まで。入場は無料。
問い合わせは電話03(5497)5444泉の森会館。

写真=制作した人形を持つ片岡さん