川崎市麻生区のかつての特産品でゴボウのように長い「万福寺大長鮮紅人参」の品評会と試食会が、ことしも12月23日に同区万福寺の麻生市民館で開かれ、家庭菜園愛好家など約50人の参加者はニンジンの出来映えを比べ、10種類以上のニンジン料理を味わった。
この催しは、1954年から5年連続で全国農産物品評会で総理大臣賞を獲得し、麻生区内の地名が付けられて全国にタネが出荷されたニンジンの復活と普及をめざして万福寺人参友の会、里山フォーラムin麻生、麻生市民館、麻生区役所が毎年催している。
ことしで10回目の品評会には、農家や友の会メンバーなどの市民、区内の金程小学校と千代ヶ丘小学校の児童が学校菜園で作ったニンジン14点が出品されたほか、審査委員長の農業研究家・飯草幸雄さんも参考出品した。
午前10時30分からの審査は、飯草さん、麻生市民館長の小金井武春さん、里山フォーラムin麻生世話人代表の山崎優さん、万福寺人参友の会会長の高橋清行さん、まちはミュージアム世話人の草野昌子 さんの5人が、形や色つや、長さの外観のほか、切り取って食べ比べ、香りや味覚などを比較審査した。最優秀賞には古沢の井上いづみさん、味覚賞に山崎優さん、香り賞に高橋清行さん、姿 (ルックス)賞に麻生市民館岡上分館、色彩賞に白井静夫さんが選ばれた。このほか、千代ヶ丘小、金程小、よだひできさんが努力賞に選ばれた。
審査委員長の飯草さんは「ことしは、7月の発芽時期の天候が不順で病気の発生が目立ち、全体的には出来は悪かったが、品評会に出されたものは平年並みかそれ以上」と講評。「昨年までうまくできないと相談された畑では、土を80cm以上掘り返してからタネをまき、成長の過程ごとに間引きについて電話で指示した。この畑のニンジンは、これまでで最高の出来でした。みなさんもタネをまく時期、間引き、草むしりなどの管理をしっかりやれば、昔のように長くて形のいいニンジンが必ず作れます」とアドバイスした。
金程小2年の児童は「生活科の授業で2年生全員で作りました。夏休みは交代で水やりもしました。掘るのがとても難しかった」と話し「みんなで蒸しケーキにして食べます」と目を輝かせていた。
審査後は、白井さんと山崎さんが提供した人参を使った料理を食べながら試食会と交流会を開催。麻生区役所保健福祉センターで健康作りのための料理講習を行っているボランティアグループ「麻生ヘルスメイト(食生活改善推進連絡協議会)」がまぜご飯、ボルシチ風、おやきなど5点の料理を出した。また、例年料理を担当する友の会会員の宮河悦子さん、山本輝子さん、吉松富貴子さんは、クリスマスにちなんで前菜からデザートまで6点のフルコース料理を作った。参加者たちは「どれもおいしい」「味と香りがしっかりしている」となごやかに談笑しながら味わっていた。
地域の歴史を掘り起こし、“幻”だった万福寺人参の復活のきっかけを作った元麻生区職員の岡本剛介さんは「畑を深く掘り起こすなど手間がかかるため普及はまだまだだが、昔栽培していた農家が協力してくれ、量は少ないものの野菜即売所で売られるようになったのがうれしい」と話していた。
農家が栽培した万福寺人参は、同区黒川駅近くの「セレサモス」などで販売される。