多摩水道橋下流の多摩川狛江市側河川敷で8月21日、「狛江多摩川灯ろう流し」(多摩川灯ろう流し実行委員会主催、狛江市観光協会後援)が催され、訪れた数百人の見物客は、読経の流れるなかで川面を彩る約600基のとうろうの光を静かに見つめながら、昔ながらの夏の伝統行事を味わっていた。
同市には、江戸時代半ばに泉龍寺(同市元和泉)の当時の住職が名主の協力で亡くなった人を供養する「川施餓鬼(かわせがき)法要」を復活させたという記録が残るなど、古くから地元で続けられてきた行事。近代に入っては、昭和初めから灯ろう流しが催され、何度かの中断期間はあったが、2003年までは花火大会と同時開催された。花火が中止となった2004年に「狛江の夏の風物詩を続けよう」と、同市内の6カ寺と市民ボランティアなどで実行委員会を結成、世界平和と環境保全を願い、毎年この時期に催しており、年ごとに見物客も増えている。
午後5時過ぎから夕涼みもかねた市民などが次々と会場の河川敷を訪れ、灯ろうの受け付けテントでは、故人の供養を申し込む人も多く、対岸の川崎市多摩区の遺族も申し込むなど、当日受け付けとしてはこれまで最多の121件にのぼった。
暗くなり始めた6時30分過ぎ、岸辺での読経の開始を合図に、小田急線の鉄橋下付近から屋形船いっぱいに積んだ灯ろうに次々と火がともされ、川に流された。静かに水面を照らす灯ろうの光が帯に、川岸の見物客はうっとりと眺めたり、盛んにカメラのシャッターを押していた。
灯ろうは河川環境保護のため、約1時間後に主催者が回収しているが、最初上流の向かって流れた灯ろうが、途中から風向きが変わり、川下に固まって流れ、ボートに乗った実行委員があわてて回収するひと幕もあった。