わがまちで資源循環型社会の実現をと、川崎市高津区役所で7月3日の午前中「花咲く地域エネルギー 〜みんなでつくる資源循環フォーラム〜」が催され、主婦やシニア世代の男性など約60人の参加者は、菜の花を栽培して資源循環を行ってる滋賀県など先進的な実例に熱心に耳を傾けていた。
写真=(上から)フォーラムで意見交換、講演する橋本絢子さん、講演する田中充さん、高津区役所の廃食油回収
フォーラムは、台所から資源循環型社会をめざそうと2008年度から高津区の区民協働事業として廃食用油回収による資源循環プロジェクト事業を行っている「かわさきかえるプロジェクト」(伊中悦子代表)が、全国展開する「菜の花プロジェクトネットワーク」(事務局=滋賀県蒲生郡安土町)に神奈川県内で始めて加入したのを機に高津区と共催。NPO法人菜の花プロジェクトネットワーク代表の藤井絢子さんと法政大学社会学部教授の田中充さんを講師に招いて講演。
フォーラムでは、主催者を代表して坂本正隆高津区副区長が「100年後の高津が自然のにぎわいある持続可能な都市となるよう、2009年度に『エコシティたかつ 推進方針』をまとめ、『まちなか油田プロジェクト』の調査研究など12の資源循環型事業を進めている。行政と市民の協働でできることを考えたい」と開会の挨拶。かえるプロジェクト副代表の松本洋子さんが「廃油の回収を始めて30年経ったが、石けん運動だけでなくみんなの力で資源循環型のまちに造り変えていきたい」と述べた。
講演では藤井準子さんが、1977年に琵琶湖の赤潮発生に端を発した石けん運動や石けんの利用の頭打ちで回収した廃食油を代替え燃料にしたり、滋賀県愛東まちの休耕田に菜の花を植えて野菜として食べるとともにナタネ油を採取、その生成過程で出た絞りカスを肥料にして農地に戻すなど地産地消で資源を循環する花プロジェクトを立ち上げるまでの自身の経験や全国各地で展開している菜の花プロジェクトについてプロジェクターで写真を映しながら説明。続いて田中さんが、川崎市が秋に提案を予定している温暖化条例についてすでに取り組んでいる自治体の例などを取り上げて解説した。その後、参加者との意見交換が行われ、区内での菜の花油を採取への期待の声などがあがっていた。
フォーラムのしめくくりには、かえるプロジェクトの伊中代表が昨年9月から区内で行っている廃食油回収の実績などを報告した。それによると、協力者を増やすために区民祭、フリーマーケットなどのイベントに参加てPRしたことが効奏し、2月までの半年間で当初予想を上回る総量約1,200リットルを集めたほか、回収ポイントも29カ所に増え、廃食油の回収が区民に浸透しはじめていると評価。こうした成果が、エコシテイ高津に取り上げられ、今年度は廃食油の回収だけでなく菜の花の栽培などさらなる事業展開を予定している。
○川崎市では1989年から廃食油を回収
川崎市での廃食油の回収は、生活クラブ生協などが中心となって1989年から市立小学校・保育園、一般家庭や企業などで行われ、リサイクル石けん「きなりっこ」のプラントが稼働。作られた石けんは、回収先の小学校などの食器洗いや一般家庭で洗濯、掃除などに使われている。「かわさきかえるプロジェクト」はこの取り組みをさらに広げ、ガソリンに変わる燃料に利用するなど資源循環型まちづくりのモデルケースと位置付けるため、2005年6月に設立した市民団体。現在、法人、個人181人が所属しており、高津区に続き2009年度は、同プロジェクト多摩区連絡会が「磨けば光る多摩事業」に応募、さきごろ区民協働序業として認定された。