小田急線開業80年と新百合ヶ丘の「新百合山手まち開き」を記念して9月13日、川崎市麻生区万福寺の十二神社で薪能(しんゆり薪能実行委員会)が開かれ、約850人がかがり火の光の中で繰り広げられる幽玄の
世界をうっとりと味わっていた。
薪能の舞台となったのは、十二神社の社殿。このまちづくりに合わせ、老朽化した殿を2005年5月に新築した。心配された天気も持ち直し、会場には午後4時過ぎか次々と人が並び始め、午後5時30分から会場。わずかに残っている当日券を求める人も多く、急きょ客席を準備する一幕もあった。
午後6時半に「新百合山手」関係者の中島豪市さんらが火入れ式を行い、開演。だが、はじめに櫻間右陣さんが率いる櫻間会の子どもたちによる仕舞が神社へ奉納され、その後、右陣さんがこの日の演目の狂言「昆布売」と能「鞍馬天狗」演目を解説した。
昆布売では、商人に太刀を奪われ昆布を売らされることになった武士に扮した人間国宝の野村萬さんが、昆布を売るためにさまざまな節回しと振りをするユーモラスな演技に会場から笑いと大きな拍手がこぼれていた。
「鞍馬天狗」は、花見で出会った山伏に扮した鞍馬山の大天狗と再会を約束した牛若は、翌日、大天狗から兵法を習う話で、区内の子ども9人も能の華やかな衣装をまとって出演。静と動が織り込まれたみごとな演技に観客は静まりかえって見入っていた。
開演前には、参道の鳥居付近で抹茶の野点のサービスも行われ、野外で味わう伝統芸能に色を添えていた。