万福寺ニンジン品評会:

051208ninjin2_1川崎市麻生区のかつての特産品「万福寺人参」を復活・普及させようと、麻生市民館で12月3日に6回目の「私たちの、万福寺人参品評会&試食会」(万福寺人参友の会、里山フォーラムin麻生、麻生市民館主催)が催され、小学生、主婦、家庭菜園愛好家、プロの農家など約30人の参加者はニンジンの出来映えを比べ、ニンジンづくし料理を味わった。

写真=全体を比較審査する審査員、ニンジンを持って笑顔の参加者、切って中央部分を比較する審査員

051208ninjin3_5長さ60〜80cmに成長し中心まで朱色をしているこのニンジンは、「万福寺鮮紅大長人参」と商品登録名が付いており、ゴボウのように長く香りや味が強いのが特徴。昭和初期に万福寺周辺で作られていた「滝野川人参(東京大長人参)」を戦後に系統分離、より色鮮やかで長いニンジンとして品種改良に成功。全国農林産物品評会で5年連続1位を受賞、優秀な農産物としてこの周辺で生産したニンジンは種を取る元の「母本」となった。しかし、百合丘団地の造成が始まった昭和30年代後半から作付け面積が減り始めたことに加え、短いニンジンが消費の中心となり、ほとんど作られなくなっていた。051208ninjin4
そうしたなか、郷土の産業を文献で調べていた麻生市民館職員(当時)の岡本剛介さんが今も種が売られていることを知り、地名の付いたニンジンを地元で復活させようと1999年に市民に呼びかけ「万福寺人参友の会」(高橋清行会長)を結成。家庭菜園をしている有志らが栽培に取り組むなど復活に向けた活動が始まり、遊び感覚で2000年に初の品評会”を催した。その後、かつてこのニンジンを作っていた農家の一部も作り始め品評会に参加、年末に軒先販売をしたり、麻生小学校が総合学習で取り組むなど少しずつ広がりを見せている。

上麻生の農家 長瀬和徳さんが金賞

051208ninjin_2品評会には農家や市民が作ったニンジンのほか、長さ77cmと今回一番長かった審査委員長の農業研究家・飯草幸雄さんのニンジンも含めて16点が出品。飯草さん、大井紀雄麻生市民館長ら5人の審査員が形、色、香り、味など各方面から比較審査、上麻生の長瀬和徳さんが金賞(1位・写真中央)に選ばれた。そのほか姿(ルックス)賞は高橋清行さん、香り賞は白井静夫さん、味覚賞に井上清士さん、色彩賞は高橋清行さんが、一般参加者も交えて決める特別賞には、おやじの会「いたか」がそれぞれ選ばれた。
金賞を受賞した長瀬さんは地元農業者で上麻生の区画整理した畑で作り始めて3年目。「いろいろな土が混じり土も深くない畑で、長さが誇れる最良のものを作るのは難しいと思っていたので、金賞に選ばれ驚いている。ことしは秋に雨が少なく土が固くなっていて掘るのに大変だったが、100本の中から選んだかいがありました」とはにかんだ笑顔。農家と友の会会長が賞を占めたなか、特別賞をもらった「いたか」は数少ない市民団体の畑で、宮前区菅生のこども文化センター近くでこどもといっしょにさつまいもなどわずかな野菜を作っている。同会の丸山幸一さんは「ニンジン畑は1坪ほどで、8人が交代で管理している。最初から参加しているが少し上手に育てられるようになった。選ばれてうれしい」と話していた。審査委員長の飯草さんは「ことしは種まきから発芽時の天候に恵まれ、出来を期待したがやや不調だった。畑を深く掘って種をまく時期を守ればいい物ができると思うので、来年に期待します」とからくちの好評だった。051208ninjin
審査後は、友の会会員の山本輝子さん、尾上菊代さん、宮河悦子さんらが作ったニンジンづくし料理を味わう交流会が催され、サラダ、フリーター、かき上げ、、ゼリーやケーキなど10種類以上の料理が並べられ、参加者たちは料理に舌づつみを打ちながら、栽培の苦労話などに花を咲かせていた。また、審査員で漫画家のよだひできさんがした「万福寺人参音頭」などを歌って交流を深めた。

写真(上から)=ニンジンを持って笑顔の参加者、切って中央部分を比較する審査員