川崎市内を北南に流れる二ヶ領用水のフェンスを、周辺の風景に調和したものにしようと、市民が投票で色を決める試みが高津区で行われ、1月下旬から採用された濃い緑色への塗り替え工事が始まった。
写真・上から=投票する委員、現場で話し合う水辺の風景部会委員、開票風景
工事を行っているのは、大山街道と交差する高津区溝口1丁目、3丁目付近の濱田橋から平成橋の約500mの区間。
投票を企画したのは、高津区まちづくり協議会の「水辺の風景部会」(川崎泰之部会長)。まちづくり協議会は、地域の諸問題を住民が話し合い、行政と協働で住みよいまちづくりを進める団体で川崎市各区に置かれ、公募や団体推薦の区民が参加してさまざまな活動を行っている。
同部会では、用水のフェンスの塗り替え工事が今年度に行われることを知り、その塗色に区民の意見を反映してもらおうと、検討を行うことにした。これまでの青緑色は明るすぎてフェンスが目立ちすぎ、周辺の街並みや枝垂れサクラの並木となじまないなどの意見が出された。こうしたことから塗り替え工事を担当する高津区建設センターと話し合い、街並みに調和する落ち着いた色を採用することで合意、焦げ茶色、濃い緑色の2種類を候補に選び、投票することになった。
同センターは、見本として12月20日に濱田橋付近の左右両側のフェンスに2種類の色を塗って協力。部会では投票を呼びかけるチラシを300枚用意して川に面する家に配布したほか、フェンスにも取り付けた。投票箱は川崎部会長が千年の健康の森から切り出した竹に穴を開けて作成、川沿いのフェンスに取り付けた。
1月2日から8日の昼過ぎまで行われた投票には、白票も含め65票が投じられた。1月8日午後2時から部会員約10人の立ち会いで開票が行われ、緑色が45票と茶色の7票を大きく上回った。川崎部会長は「実験的な試みに、予想以上に多くの人が投票してくれ感謝している。こんなに票差が出るとは思わなかったが、街に調和する色に決まってよかった」と話した。また、委員の一人で色彩計画家・吉田慎吾さんは「色の要素のひとつ、彩度を押さえると川やサクラがきれいに見える」と結果を評価している。
西村孝彦・区建設センター所長によると、区内の二ヶ領用水の長さは約3kmで、今年度の500mを手始めに、下流に向かって毎年少しずつ市民が決めた色に塗り替え、濱田橋より上流のフェンスは、塗り替えて間もないため下流の塗り替えが終わってから考えたいという。