泉龍寺のまわり地蔵:狛江駅前の泉の森会館で11月26日まで資料や地蔵を展示

04112001小田急線狛江駅前の泉の森会館(狛江市元和泉1-8-1)で「泉龍寺のまわり地蔵展」が11月20日から催され、多くの市民の関心を集めている。同会館の利用者などで構成する泉の森友の会の設立1周年行事のひとつとして企画されたもの。会場には、同市内の文化財などを調査している狛江民俗の会(中島恵子会長)が調べた成果を写真やパネルなど約50枚で紹介、泉龍寺に残る貴重な実物も並べられ、訪れた人たちは熱心に見て回っていた。同展は26日までで、21日午後2時30分から「まわり地蔵と狛江の昔むかし」と題したパネルディスカッションも行われる。
写真=会場に「再現」された巡行中のまわり地蔵(手前)とパネル

泉龍寺のまわり地蔵は高さ約18センチの小さな木彫りの座像で、左手に赤子を抱いている。江戸時代中期から戦争中の1944年にかけて神田、日本橋など江戸の中心部や三多摩地区、さらに埼玉県所沢市や入間市などへ出張する「巡行」が盛んに行われた。1年の大半を各地域を回り、子宝に恵まれる、安産にご利益があるとして多くの信仰を集めた。
当時は、地域ごとに信者が「講中」を作り、月ごとに決まった巡行地の民家に1泊してまわった。地蔵の宿となる家には、集落の人々が集まり地蔵を参拝、移動は寺男や講中の人々がしょいこや大八車で運ばれた。「子育て地蔵」「世田谷のお地蔵さん」「子安地蔵」などの名で親しまれるほか、巡行の道中、集落に近づくと鉦(かね)をならして歩くことから「カンカンのお地蔵様」とも呼ばれた。
寺に戻ってくる23日と24日には縁日などもたち、参拝客などでにぎわったという。大縁日といわれる11月23日には、いまでもかつての講中の世話人の人々が泉龍寺に集まり、この地蔵を参拝している。
巡行が行われなくなってから既に60年たち、地元でも知らない人が増えてきていることもあり、文化財への関心を高め、地域への愛着心を深めてもらおうと大縁日に合わせ、展覧会が企画された。
会場には、地蔵が「出張」中に身代わりとなる「お留守居さま」と呼ばれる地蔵像も展示。資料や聞き取り調査を基に、願い事をする時に備える飾り物を会員が手作りし、宿でまつられた様子を「再現」、昭和2年につくられた長さ数メートルもある幕なども張ってある。このほか、ことし4月から巡業地で調べた各地のまわり地蔵についての解説や写真、地図などが展示され、いまではなじみが薄くなったかつての信仰のかたちを知ることができる。なかには、地蔵像をめぐり寺同士の訴訟沙汰になったことなど興味深い事実も紹介されている。
4月から調査をはじめて準備にあたってきた同会の坪西由美子さんは「狛江の民俗・文化財を見直すきっかけとなって」と話している。
21日のパネルディスカッションでは民俗の会の中島惠子さん、泉龍寺住職の菅原昭英さん、土地っ子の飯田久雄さん、大久保益男さんが、まわり地蔵や地域について語り合う。また午後2時からミュージカル集団「coco〜」がまわり地蔵にちなんだミニミュージカルを披露する。
入場は無料で時間は午前10時〜午後8時。
当日は、1周年記念行事として午前10時から針金と竹でつくるおもちゃとかざりの工作指導もある。
問い合わせは電話03(5497)5444泉の森会館。