高橋都彦前市長の辞職に伴う狛江市長選挙は7月22日に投票が行われ、即日開票の結果、元副市長で結婚相談所経営の松原俊夫氏(66)=明政クラブ・自民党、公明党推薦=が、前市議会議員の田中とも子氏(60)=共産党、生活者ネットワーク、社民党、自由党推薦=を破り、無所属新人同士の戦いを制して初当選を果たした。得票数は松原氏17,834票、田中氏12,763票で、5000票余りの差となった。
写真=支持者たちと万歳する新市長の松原氏
市長選は、市長のセクハラ疑惑が全国的に注目を集めるなかで行われた。松原氏は「一緒にまちづくりをしてきた仲間(後輩職員)が、セクハラで傷ついたことは断じて許せない」とし、「市役所の混乱を解決できるのは(元職員の)私しかいない」とセクハラ問題への憤りを表明するとともに、今後は「ハラスメントをなくし、平和と人権を守るための先進的な条例を市民参加で作り上げたい」と話し、基本理念として「人に優しいまちづくり」を掲げた。また、38年間に及ぶ行政経験の中で多摩川水害、中越地震による新潟県川口町(現・長岡市川口地区)への支援など災害対応を行った実績を強調、副市長時代などにたずさわった参加と協働、情報公開をさらに進めると訴えた。
これに対し、他の女性市議とともに追求を続けてきた田中氏は「セクハラ問題をしっかり検証し教訓化する必要がある。再発防止策を進めハラスメント根絶宣言をし、人権・暮らしを守る市政にする」と語り、「災害死者ゼロ・待機児ゼロ・孤独死ゼロ」の三ゼロ実現を訴えた。
ただ、かつては矢野裕元市長を副市長として支え、政策的にも大きな相違点がないこともあり、松原氏への直接的な批判が難しいためか、高橋前市長を与党として支えた明政クラブ・自民と公明が支援する候補という間接的な批判にとどまる傾向もみられた。
当選した松原氏は、猛暑の中を戦った疲れも見せず、支持者たちと万歳をして喜びながらも「私自身は市民には無名だったが、支えてくれた人たちの力で勝利でき、感謝したい。福祉と防災を訴え、38年間の市職員としての実績を即戦力として評価していただいたことが勝因」と分析、「これから人に優しい、平和と人権を尊重する、しっかりした街づくりを進めていきたい。まず、セクハラ問題で混乱した市役所の立て直しと信頼回復に1日も早く取り組みたい」 と意欲をみせていた。
一方、田中氏は「力足らずで残念な結果になったが、たくさんの支援をいただけて感謝しています。選挙活動を通して多くの市民とつながることができ、しっかり戦えた。無党派層を取り込んで票を伸ばしたかったが、浸透しきれなかった」と静かに語っていた。
松原氏は東京都世田谷区生まれ。駒澤大学経済学部を卒業後、1974年に狛江市役所に入庁、環境、福祉保健部を経て市民協働課長、資格財政部長などを歴任、2008年〜2012年に矢野市長の下で副市長を務めた。2013年に長男ら家族と結婚相談会社を設立し代表取締役に就任。子どもは男子2人で現在は世田谷区桜丘に妻と2人暮らし。