川崎市麻生区の特産品「禅寺丸柿」が国の登録記念物に指定されていることを多くの人に知ってもらおうと、柿生禅師丸柿保存会(水野英雄会長)が、同区王禅寺東の星宿山王禅寺境内にある高さ約7mの禅寺丸柿の原木の横に登録記念物のプレートを埋め込んだ記念碑を建立、10月21日に会員など約50人が見守る中で除幕式が行われた。
写真=碑を除幕する柿生禅師丸保存会の歴代会長
禅寺丸柿は、鎌倉時代の1214年に同区王禅寺の山中で発見された日本最初の甘柿で、「柿生」の地名の由来となったいわれる。小ぶりで丸いこの柿は江戸時代初期から柿生周辺で栽培され、地域の重要な特産品として農家の生活を支えた。次第に産地が広がって江戸の市場に出荷され、池上本門寺の御会式の市では「江戸の水菓子」として人気を集めたと伝えられている。1906(明治42)年には、柿生村王禅寺の森家で収穫した禅寺丸が明治天皇に献上された記録も残っている。明治末期から大正初期に最盛期を迎えたが、その後新種の甘柿に押されて出荷が減少し、都市化で木の本数が減り、昭和40年代には市場から一時姿を消した。
保存会は、歴史あるふるさとの名産品を保存して後世に残そうと、かつての柿農家など有志170人が1995年6月に発足した。禅寺丸柿の調査に加え、区内の公共施設や公園、小学校などに記念植樹するなどの活動を行っている。翌年には柿を使った新商品の開発に取り組み、JAセレサ川崎や山梨県のワイナリーの協力で柿ワインの試作に成功、1997年から販売を始め、1999年に川崎市ブランドの指定を受けた。同寺境内にある木は、原木から生えたひこばえといわれ、2007年にこの原木を含め樹齢400年以上と推定される7本が国の登録記念物に指定され、会員がせん定などの保存活動を行っている。
禅寺丸柿は2012年には麻生区の木に選定され、同年秋には伊勢原市、町田市などの柿生産者を集めて同区で「柿サミット」を開催した。これにちなんで、2014年にサミットを開いた10月21日を「禅寺丸柿の日」とすることを日本記念日協会に登録、昨年は木の発見から800年を記念したイベントも催した。
登録記念物の証明として国から受け取ったプレートは、これまでJAセレサ川崎柿生支店に保管されていたが、同会では多くの人の目に触れる場所に置いて禅寺丸柿の歴史や地域の人々の思いを伝えようと、会の創立20周年の記念として碑を建立することにした。
記念碑は高さ130cmの石にプレートをはめ込んである。除幕式には多田昭彦・麻生区長や笠原勝利・麻生区観光協会会長、高桑光雄・神奈川県農業協同組合中央会会長らが出席。同寺の森雄幸住職による法要の後、宮野薫さん(85) 、中山茂さん(79)、森章さん(79)、水野さんの歴代4会長が紅白の綱を引いて除幕した。
水野会長は「禅寺丸柿は、一時は市場から消えたが、会員が保存活動を続けた結果、多くの人に見直された。禅寺丸柿の原木は故郷の誇りで、柿生の原風景が残っている王禅寺に碑が建立できて感謝しています。これからも保存活動を続けていきたい」と話している。