阿部孝夫川崎市長が退任:3期12年、「ありがとう」の声に送られ市役所を笑顔で後に

131118阿部市長退任05川崎市の阿部孝夫市長(70)が11月18日に任期を終えて退任、多くの市の職員に見送られ笑顔を浮かべながら3期12年にわたって行財政改革、自治基本条例、新総合計画など「川崎再生」に向けて数多くの課題に取り組んだ市役所を後にした。

写真=花束を手に市役所を去る阿部市長

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退任の挨拶をする阿部市長

13時30分から本庁舎講堂で行われた退庁式で阿部市長は、約300人の幹部職員を前に約20分にわたって挨拶、「早いものでもう12年になりました。たいへんお世話になりました」と切り出した後、自ら取り組んだ政策についてエピソードをまじえながら振り返るとともに、「仕事のやり方については金をかけないでいい成果を出す、まちづくりについては、将来に向けてコンパクト化、長寿命化、エコ化、ユニバーサル化を心がけてきた」と語り、「(手当カットなど)自分たちの身を切りながら市民のためにいい行政を残していこうという心構えをみなさんが持ってくださったために今日があります」と職員にねぎらいの言葉を述べた。「これからも川崎市が「(新総合計画「川崎フロンティアプランにある」)誰もがいきいきと心豊かに暮らせる持続可能な市民都市になるように力を尽くしていただきたい」「「首都圏の中心に位置するこの川崎市の強みを守っていっていただきたい」などと激励。

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講堂で行われた退庁式

「市民が中心で、市民が税金にぶら下がるという都市ではなくて、市民が税金を納めなくても街をつくっていくのが市民都市です。これが市民自治条例の基本。その理念が実現するようにみなさんに取りはからっていただきたい。こうした基本方針と新総合計画をつくり、それと人事評価を連動させて科学的、合理的に行政を進めていくことで自動的に川崎は良くなっていきます」「公共の福祉には、街をつくっていく福祉と弱者を救済する福祉があり、両方な いと社会はおかしくなる。その公共の福祉を実現するために民主的で能率的な仕事をする。能率的とはただ単に金を節約することではありません。事業を実施し、成果を上げる過程での労力や経費を最小限にすることです。やらないで黒字を出すのは簡単です。世間では借金を減らして、赤字を減らすことが評価される傾向がありますが、とんでもない間違いです。地方自治は税収が自動的に入ってくるわけで、仕事をやらなければ必ず黒字になります。黒字を出すことが自治体の仕事ではありません。仕事をやることが自治体の仕事であり、その仕事をやったうえで成果を出して、経費を少なくすることが一番難しくて大事なことですので、これだけは心がけていただきたい」と行政担当者として基本的な考え方を語った。

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かけつけた市民から花束を贈られる阿部市長

結びに「これからもずっと川崎市民として今後を見守っていきたいと思います。どうかほんとうにいい街川崎を、世界の中の川崎をつくっていただきたい、長い間ありがとうございました」と別れの言葉を述べた。
これに先立ち、職員を代表して砂田慎治副市長が「長きにわたってほんとうにお疲れ様でした。また、本当にありがとうございました。(行革を担当したが)行革をやるにあたって、市長に『それをやると物議をかもしませんか』と申し上げたら『物議をかもすのがこわくて行革ができるか』と厳しく怒られたことを覚えています。当時、川崎市は財政的に非常に危険な状態にありましたが、この12年間努力を積み重ね、全国に例を見ないくらい大規模な改革を順調に進めることができたのも阿部市長のリーダーシップのたまものと思っています。現在、川崎市は全国に例を見ないくらい健全な状態になりつつあります。また、空洞化が進んでいた臨海部もライフイノベーション戦略特区といった日本を牽引するような経済的な拠点になりつつあります。各地区の拠点の整備も進んでおり、一方で文化やスポーツも花が開いています。いつも口を酸っぱくして自治法に基づく民主的で能率的な仕事を科学的にやるんだとおっしゃった。また、広い意味での公共の福祉は何かということを考えながら仕事をしなさいと教えていただいた。これからも、市長に教えていただいた仕事のやり方を肝に銘じて、職員一同、川崎の発展のために努力をしていきたい。今後も助言と指導をしていただきたい」と送別の言葉を述べた。

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見送りの職員や市民に手を振る阿部市長

14時過ぎ本庁舎玄関に現れた阿部市長は、駐車場を埋めた約700人の職員や市民から拍手や「ありがとう」「ご苦労様でした」などの声に時折手を振って答えた。元秘書課の女性職員や市民から花束がプレゼントされ、抱えきれなくなる場面もあったが、晴れやかな表情で職員や市民と挨拶や握手を交わしながら歩き、迎えの車に乗り込んだ。