江戸時代の川崎宿を見ながら体感できる「東海道かわさき宿交流館」(川崎市川崎区本町1-8-4)がこのほど川崎駅近くの東海道沿いに完成、10月1日にオープンする。開館に先立ち9月28日、同館の設立に力を注いだ関係者などが参加して記念式典が催され、施設の展示物や石碑などが披露された。また、9月29日10時〜15時まで一般市民を対象に内覧会が催される。また、歌川広重が描いた東海道五十三次の浮世絵が開館記念の特別企画展として開催される。展示される浮世絵はすべて初刷りという貴重なもので、マニアだけでなく、多くの人の関心を集めそうだ。
写真=川崎宿を紹介した展示室
同館は、川崎市水道局川崎営業所分室跡地の655平方メートルの敷地に駐輪場と併設で鉄骨造り地上4階建てとして建設された。うち1階から4階までの1,013平方メートルが同館のスペース。
東海道川崎宿は、江戸時代にできた五十三次のうち2番目の宿。品川ー神奈川間の距離が約40kmと長いため、旅人や伝馬の便宜を図るために他の宿より少し遅れて1623年にでき、ことしで390年を迎える。
川崎宿は現在の川崎の街の原点ともいえる場所だが、戦災などで資料がなくなり、江戸時代の面影もほとんど残っていない。
こうしたことから川崎市観光協会代表で同館近くで「砂子の里資料館」を主宰する斎藤文夫さんをはじめ、多くの区民から「川崎宿」を川崎区の街づくりに生かしたいとの声があがり、川崎ゆかりの時代行列パレード「大川崎宿祭り」や資料館設置の署名運動など市民がさまざまな取り組みを行ってきた。
同館は、市民の声を受けて川崎宿の歴史や文化を学び、後世に伝えることを目的に川崎市が設置、指定管理者制度を採用し川崎市文化財団・川崎市観光協会グループが管理・運営する。
1階(199平方メートル)には、かつて川崎宿にあり初代駐日公使のハリスが宿泊し、名物の奈良茶飯などを提供したとされる「万年屋」を模した畳敷きの「万年屋風お休み処」(写真右)を設置、前面にはモニターを置き、東海道や川崎宿についての簡単な解説が見られる。また、受付や休憩・交流コーナー、川崎名物の菓子や工芸品を販売する物販コーナーがある。
2階と3階(各173平方メートル)は展示室で、4階(468平方メートル)は2室に分けられるステージ付きの集会室や談話室、ロビー・多目的スペース、事務室、倉庫がある。
2階の展示室は、床面が江戸時代の川崎宿の様子を描いた絵地図となっており、周りには映像やグラフィックなどで江戸時代の川崎宿を紹介する「川崎宿ものがたりBOX」が配置されている。このほか、川崎宿の模型や旅道具をそろえたコーナーや六郷の渡しの記念スポットが設けられている。
3階の展示室は、明治から現代の航空写真と地図情報を重ねた大型モニター画面があり、画面にタッチすると今と昔の川崎の姿が映し出される「川崎発掘・いまむかし」のほか、小泉次太夫、田中休愚など川崎宿ゆかりの人物についてのパネルが設置されている。またパーテーションが可動式となっている企画展示スペースもあり、開館記念の特別企画展として「広重東海道五拾三次」が10月27日まで開かれる。
階段には東海道五十三次の浮世絵が貼られ、館全体で江戸時代の川崎宿を体感する仕掛けが施されている。
今回は特別企画展は、砂子の里資料館が所蔵する浮世絵で、出発地の日本橋、終着の京都・三条大橋までの初版刷りの55図のほか、「異刷」の作品を並べて展示、全体の表紙にあたる題字、浮世絵を入れる「絵袋」など63点を展示している。入場は無料。
開館時間は、展示室・休憩・交流スペースが9時〜17時、有料で貸し出す4階の集会室・談話室は9時〜21時。月曜休館で、入館料は一部の企画展を除き無料。
この日9時50分から行われた記念式典には、阿部孝夫市長、東海道かわさき宿交流館推進委員会代表の斎藤文雄さん、黒川雅夫神奈川県副知事、多摩川を挟んで隣の松原忠義大田区長らが列席、このほか市議会議員や関係者約200人が出席。オープニングにおめでたい席で歌われる川崎古式消防記念会の木遣り歌が披露された後、阿部市長らが入り口のテープカット(写真左上)を行った。また、11時45分からは同館前の東海道で同記念会のまとい振りの行列(写真右下)も行われ、入口左側に立てられた、阿部市長が文字を書いた高さ約2mの石碑が除幕された。
阿部市長は「2023年に川崎宿は400年になる。400年に向け斎藤さんをはじめ地元の人たちが熱心に川崎宿を生かした街づくりの活動を進めてきたことが、ここに結実し川崎の魅力発信がひとつが誕生しました。資料館としてだけでなく、宿を案内するガイドボランティアや街歩きの人が交流できる場所も作ったので、ここを拠点にさらなる活動に役立ててもらいたい」と挨拶。斎藤文雄交流館推進委員会代表は「地元の人たちの40有余年の願いが実現できました。ここが川崎の南北の市民の交流の場としてだけでなく、海外からも川崎を知ってもらい力を発信するところとなると期待しています。約600人の方からいただいた約3,700万円の寄付は運営費にあて東海道一の施設になるようにしたい」と話した(写真左下)。また黒川副知事は「神奈川県には東海道の宿が9箇所あり、川崎宿はその最初の宿で神奈川の顔ともいえるところ。他の宿場との交流がつながり、観光に寄与できるといい」と祝いの言葉を述べた。
午後からは、同館設立に向けて基金を寄せた人や近隣の町会関係者、小学生など招待客約400人が、「このあたりは江戸時代もにぎわっていたんだ」「浮世絵で昔の人の旅の様子が分かる」などと熱心に見て回っていた。
問い合わせは電話044(280)7321東海道かわさき宿交流館。