川崎フロンターレのホームグラウンド等々力陸上競技場(川崎市中原区)で4月20日、改修で取り壊されるメインスタンドの壁の一部をサポーターなどが電動ドリルやツルハシ、ハンマーで壊すユニークなイベントが行われた。
写真=旧メインスタンドの客席で解体工事を体験する川崎フロンターレサポーター
「Thank You TODOROKI さよならイベント」と名づけられたこの催しは、「等々力陸上競技場の全面改修を推進する会」(斎藤文夫会長)が、さまざまなドラマを生んだメインスタンドに感謝の気持ちを込めて思い出を残そうと、同クラブ、工事関係者の協力で催された。
午前8時30分からのイベントには、親子連れや夫婦、観戦仲間など約80人が参加、なかには昔のユニフォームなどを着た熱心なサポーターもいた。
参加者は、主催者が用意したチームカラーの青と黒にFの字が書かれた特製のヘルメットとゴーグル、防じんマスクを付けて工事現場に入り、2012年のホーム最終試合で選手や監督、クラブ関係者が書き込んだメッセージを見学、選手のロッカールームだった場所に競技場やクラブ、選手への感謝の言葉を書き込んだ。これらのメッセージは、新しいメインスタジアムの中にモニュメントとして残される予定だ。
客席では、工事関係者から電動ドリルの使い方の指導を受けた後、実際に交替でドリルを使い、あらかじめ切り取られたコンクリートの壁にハンマーを当てたり、ツルハシを使って壁を壊す解体工事の疑似体験を行った。
1998年からフロンターレを応援している中原区の小泉亮輔さんは妻と2歳の長男の3人で参加「15年間通っているうちに家族が増え、いろいろな思い出ができたので参加しました。メインスタンドは老朽化していると思っていたけど、実際にドリルを使ってみて、固くて頑丈だったことに改めて感動しました」と話していた。
約1時間のイベント終了時に、主催者の等々力陸上競技場の全面改修を推進する会事務局長の紀中靖雄さんが、大人1人1万円の参加費から、参加者が持ち帰るヘルメットなどの費用を除いた金額をスタジアムの建設費基金として川崎市建設緑政局に贈った。
同局等々力緑地再編整備室では「事故もけがもなくてよかった。工事現場には一般市民は通常は立ち入れないが、良い思い出になったと思う。参加した人のスタジアムへの思い入れを新しいスタジアムにつなげていき、これまでの寄付金も含めて有効に活用をしたい」と話していた。