川崎市の桐光学園と福島県の高校生がサッカーで絆深める:被災地の厳しい現状痛感

120723koryu 1サッカーを通して絆を深めようと、神奈川県代表としてインターハイ出場を決めた川崎市麻生区の桐光学園サッカー部員が、7月23日に東日本大震災で被災した福島県の県立高校のサッカー部員と練習試合や親睦会で親交を深め、冬に行われる全国高校サッカー選手権大会での再会を誓い合った。

写真=桐光学園と福島県平工業高校の交流試合

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桐光学園と小高工業の交流試合

交流は、全国高校サッカー選手権大会実行委員会の「高校サッカー GO100」プロジェクトの一環。このプロジェクトは、全国4000校、約15万人の現役サッカー選手を軸に「高校サッカーファミリー」から、時代や世代を超えてつながりを広げ絆を深めることを目的に2011年から始まった。ことしは震災で思うように活動ができない地域の2校と、選手権大会に何度も出場している桐光学園が選ばれた。
参加したのは、桐光が部員49人のうち33人、福島県からは、東日本大震災で事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所から20km圏内にあり、現在は別の場所に仮設校舎がある小高工業高校校サッカー部員15人と、原発から約40km離れたいわき市の平工業高校サッカー部員19人。小高工高は3年生、平工高は家が被災したり家族が犠牲になった生徒が参加した。

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被災地の様子を説明

午前中は、稲城市にある東京ヴェルディの練習場で、小高工高と平工高の部員がインターハイに出場する桐光学園サッカー部とそれぞれ1試合ずつ交流試合を行った。結果は、桐光学園が2試合とも完封勝利した。その後、福島同士で練習試合を行い、Jリーガーが練習に使っている広いグラウンドを走り回り、思い切りプレーできる喜びをかみしめていた。
桐光学園の部員らはひと足先に学校に戻り、校内視聴覚室で平工高の田野入清明監督から2011年3月11日の震災当日や東電の事故後の様子、線量計が必需品となった日常生活、原発事故の前線基地となったJビレッジ、練習場や対戦相手もままならない福島県内のサッカー界の厳しい様子など、被災地の様子を資料を使いながら約30分間にわたって紹介、「今回の交流で子どもたちだけでなく引率した教師も勇気と元気をいただいた。福島に住み続ける私たちは20年、30年の間戦いは終わらないが、(原発事故について)忘れ去られることのないようにしたい」と話した。

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食事をしながら交流

その後、同高の食堂で親睦会を開き、3校の生徒たちは軽食をとりながら談笑、次の対戦を約束した。
平工高の川原一樹キャプテンは「震災から1年、復興はまだまだで、放射能汚染でまともな練習が行えないなかで、みんなと協力しあって部活を続けています。インターハイ直前の大事な時にこのような会を開いていただき、学ぶことも多くいい経験になりました。この思い出を力にして、高校選手権に出られるようにしたい」と挨拶。小高工高の鈴木健太キャプテンは「(桐光の選手は)キック、トラップ、パスの精度など基本的なレベルが高く、いい経験になりました」と感想を述べた。

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伊奈博桐光学園校長からペナントを渡された福島両高の主将

一方、桐光学園の佐藤健太キャプテンは「これまでは、当たり前だと思っていたが、福島の先生の話を聞き、自分たちが恵まれた環境で生活し、サッカーができる幸せを強く感じた。インターハイでいいサッカーをして結果を残すことで、きょうの交流の感謝を表したい。次は選手権で出会えるようお互いに頑張りたい」と話した。また佐熊裕和監督は「卒業生の中には、被災地出身のJリーガーもいて、その大変さを感じている。うちの生徒たちは、〔被災地の〕ビデオや話を通してサッカーができない子がいること聞くことができ、甘えることなく最後まであきらめない気持ちと勇気をもらい、いい経験になった。(今回の交流を)忘れないように生徒たちと話し合っていきたい」と話していた。
交流を企画した日本テレビの澤田勝徳さんは「これからの日本を支えるのは高校サッカー世代。きょうのことを忘れないで、あしたから絆づくりに取り組んでほしい。各校ともさらなる活躍を祈っている」と結んだ。