「源流のまち」川崎市多摩区で400年記念の二ヶ領用水展:大切さ見直そうと展示や演劇、落語、シンポなど多彩に

二ヶ領用水多摩区展 川崎市多摩区の多摩区総合庁舎で、「二ケ領用水竣工400年記念 ~源流のまち 多摩区展~」(多摩二ケ領用水400年プロジェクト実行委員会主催)が10月15日から開かれ、訪れた市民たちは二ヶ領用水をテーマにした今と昔の写真や区内の小中学生の絵画や書、詩などの展示、県立向の岡工業高校の生徒の発表などに足を止めて見入っていた。16日には展示に加えて小中学生による演劇と演奏、17日には落語とシンポジウムなどさまざまな催しが開かれる。

写真=小学生の力作が展示されたアトリウム


二ヶ領用水は、多摩川の上河原堰(同区布田)と宿河原堰(同区宿河原)の2カ所から取水し、他の川と合流して幸区まで全長32kmを流れる用水。主に農業用水として使われていたが、明治時代には上水道、昭和10年代半ばからは工業用水としても利用され、近年は環境用水としても利用されている。
江戸時代の慶長2(1957)年に、治水と新田開発を目的に徳川家康から命じられた小泉次太夫が14年がかりで用水を完成させてから来年で400周年を迎える。このため、用水が川崎の発展に果たした役割を見直し、次代へこの貴重な歴史遺産を伝えようと、市内でさまざまな取り組みが行われている。
多摩区では、2カ所の取水口がある源流のまちとしての視点から、用水が育んだ産業に注目、産業遺産の紹介、シンポジウム、小中学生による用水についての作品展示などの記念イベントを開くことにした。稲田多摩川観光協会、稲田郷土史会、二ヶ領用水宿河原堀を愛する会、中野島町会などの地元関係者と区役所で実行委員会(委員長=原島弘・稲田多摩川観光協会会長)を結成し、準備を進めてきた。
展示会場の1階アトリウムと11階会議室には流域にある長尾、稲田、宿河原、中野島、下布田の小学校5校、稲田、枡形の中学校2校、向の岡工業高校の力作が三角柱のパネルなどに展示され、多彩な作品に見入ったり、携帯のカメラで撮影する人など好評だ。11階会議室には、おいしい米として将軍家光も食べ、将軍家の御用米となった「稲毛米」をはじめ、多摩川梨、桃などの農産物、さらには高級な紙として知られた「和唐紙」などの製紙、製氷、酒造などの地域の産業にスポットを当ててパネルで紹介、今と昔の写真を幅5m、高さ1mの地図上に印刷した大きなパネル、昔の流域の地図などを資料を紹介した郷土史コーナー、向の岡工業高校の生徒による二ヶ領用水の測量の発表などもあり、熱心に質問する人の姿もめだった。また、向の岡工業高校機械科の生徒が作ったオリジナル携帯ストラップも来場者にプレゼントされ、喜ばれていた。
16日は午前10時から市民館大ホールで記念の演劇と演奏が午前10時から行われ、稲田中演劇部が「PR大作戦2010〜二ヶ領用水のあるまち」を上演、登戸小スクールバンド、中野島中吹奏楽部、多摩区文化協会の多摩川音頭などが披露される。
17日は午後1時から11階会議室で記念イベントとして多摩区観光大使を務める区内在住の落語家・桂米多朗師匠の落語、宿河原小の中川通彦校長による「小学校社会科学習における二ヶ領用水」と題した講演、「二ヶ領用水のこれから」をテーマにしたパネルディスカッションが山本俊哉・明治大学教授をコーディネーターに開かれる。
16日は食堂で地元特産ののらぼう菜を使った新しい菓子、17日は多摩区青果組合による桜もちの試食会もある。
16日、17日は多摩区文化祭も同じ多摩区総合庁舎で催されるため、多くの区民の注目を集めそうだ。