川崎市多摩区の菅獅子舞:伝統の舞いを中学生が継承、デビュー飾る

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「ふるさとの伝統芸能はぼくたちが引き継ぐ」--川崎市多摩区菅北浦4丁目の菅薬師堂で9月13日、獅子舞が催され、中学生5人がデビューを飾った。この獅子舞は古くから地元に受け継がれてきたもので、神奈川県指定無形民俗文化財に指定されている。境内を埋めた観客たちは、雄獅子、雌獅子、臼獅子の3頭と天狗(てんぐ)がくり広げる勇壮な舞いに盛んな拍手を贈っていた。

写真は獅子舞を披露する中学生たち

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菅の獅子舞は1人立3頭形式といわれる形式で、雄獅子(おじし)、雌獅子(めじし)、臼獅子(きゅうじし)、天狗(てんぐ)の4人が、胸に付けた太鼓を打ちながら歌と笛に合わせて舞う。「五穀豊穣、天下太平」などを願って江戸時代中期の18世紀には既に舞われていたといわれ、菅薬師堂奉賛会と菅獅子舞保存会の手で守り伝えられている。
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境内は、子どもたちの晴れ舞台を見ようと菅北浦緑地に通じる斜面の道にまで人があふれ、阿部孝夫市長も訪れるなど、普段の静けさとはうって変わって熱気に包まれた。舞いを披露したのは、雄獅子が入山八大(やひろ)君、臼獅子が佐々木柊(しゅう)君、雌獅子が山本啓人(あきと)君、天狗が小田幹也君と鈴木友和君。5人は全員中学1年生で、山本君が南菅中、他の4人は菅中(写真左上)。この日は、通常はひとりの天狗を、「せっかく練習した成果を見てもらいたい」とふたりに増やし、獅子を先導して土俵に登場(写真右下)。約40分にわたって舞いを披露した(写真左下)
獅子の舞い手はかつては地元の旧家の長男が務めていた。1時間以上にわたってほとんど休みなく激しい舞いが続けられるだけの体力が必要で、細かい所作も多く、ばくちやけんかの場面など演技力も要求される。このため、従来は「親子」と呼ばれる強い関係を結び、長い時間をかけて舞いの手ほどきを受けてきた。また、昨年までの舞い手は、4人全員が仕事の関係などで県外に住んでおり、祭の時だけ地元に帰ってきていた。
こうしたことから、後継者の育成が急務とされ、保存会では後継者を育てるため、4年前からこども教室を開き、笛などを担当する小学生に舞いの指導も行ってきた。今回は、中学生たちから「祭で舞いをやりたい」と希望の声があがったため決断、ことし5月から本番に向けて本格的なけいこに取りかかった。夏休みには週3回、薬師堂に集まって特訓に励んだ。また、子どもの体格に合わせて衣装も新調するなど、保存会をあげて取り組んだ。
090913shishimai04無事大役を果たした5人は汗びっしょりになって「疲れた」と言いながらも、拍手を浴びて満足げ。「獅子頭が重かった」「周りが見えないので、自分のいる位置がわからずたいへん」と振り返り、これからも練習を重ねて舞いを続けたいと意欲を燃やしていた。
舞いの間中心配そうに見守っていた保存会の会員たちは、舞いが終わると笑顔をほころばせ、ほっとした様子で舞い終えてはしゃぐ中学生たちを頼もしそうに見やっていた。保存会では、本来は舞い全体で1時間10分ぐらいだが、体がまだできていないので、ことしは3分の2に短縮した。2年後には全部舞えるようにし、もう1組編成したい。多摩区を代表する獅子舞として、これからはもっと多くの市民に見てもらえればとしている。