アメフトW杯川崎大会:延長戦制しアメリカが初優勝、日本は3連覇ならず

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アメリカンフットボールワールドカップ2007川崎大会は7月15日、川崎市中原区の等々力競技場で決勝戦が行われ、延長の末、初出場のアメリカが日本を23対20で破り、初優勝した。3連覇をめざした日本は、先制されたものの逆転、終盤までリードを保つなど、アメフトの「本場」アメリカと互角に戦ったが、最後で涙をのんだ。

写真は延長でフィールドゴールを決め初優勝に喜ぶアメリカ代表選手とへたり込む日本代表選手

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台風4号が抜けたものの、時折小雨が見舞う等々力競技場。日本対アメリカという好カードに次々と家族連れなどが訪れ、スタンドは1万人を超す観客で埋まった。
阿部孝夫川崎市長のコイントスで始まった試合は、日本が第1クォーターにインターセプトを許してアメリカに攻撃権を奪われ、RBカイル・カスパーバウアー(26)のタッチダウンで先制された。しかし日本は、平均年齢23.2歳の学生主体チームでスピードあふれるプレーで若さと体力に勝るアメリカから主導権を奪い返し、第2クォーターにQB冨澤優一(13、オンワードスカイラークス)からのパスを受けたDL紀平充則(92、オービックスシーガルズ)がタッチダウンを決めて同点。さらにK金親洋介(1、オービックスシーガルズ)のフィールドゴールで逆転して前半をリードして終わった。
後半に入ると、第3クォーターにフィールドゴールで追いつかれたものの、第4クォーターにTE黛拓郎(87、アサヒビールシルバースター)がタッチダウンを決めて、再びリードした。そのまま逃げ切れるかと思われたが、残り2分51秒でカスパーバウアーにこの日2つめのタッチダウンを許して17対17の同点とされ、延長に入った。
070715japan_usa59延長はタイブレーク方式(敵陣25ヤードから攻撃を同じ回数くり返し点差が付いた時点で終了)で行われ、先に攻撃したアメリカがPK/Kクレッグ・コフィン(4)がフィールドゴールを決めたのに対し、日本も金親のフィールドゴールで追いつくなど白熱した展開。2回目のタイブレイクで攻撃を先行した日本は金親が風の吹くなか34ヤードのフィールドゴールを外し、一方アメリカはコフィンがきっちりと23ヤードのフィールドゴールを決め、2時間33分の試合を制し、ワールドカップの栄冠を手にした。
また、MVPにはアメリカ代表のカスパーバウアーが選ばれた。
日本は、攻撃の獲得ヤード、パスの成功率もアメリカを上回っていただけに、試合の終わった瞬間、選手たちはグラウンドにへたり込み、しばらく立てない選手もいた。
日米両国の選手がくり広げる手に汗握る展開に、スタジアムがしばしばどよめきで包まれるなど世界一を決める戦いにふさわしい雰囲気。ファインプレーが飛び出す度に大きな喚声と拍手で埋まるなど、客席の家族連れなどはアメフトのおもしろさをたっぷりと味わっていた。
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試合後、アメリカには直径数10センチの金杯型のトロフィーがトミー・ヴァイキング国際アメリカンフットボール連盟会長から選手に手渡された。
試合後の記者会見で優勝したアメリカのジョン・マコヴィック監督は「まず、今回の大会を運営した川崎大会組織委員会に敬意を表したい。初めての参加だったが、練習場、宿泊設備などすべてすばらいものを用意してもらった。特に芝は、昨日までの数日間の雨を感じさせない良い状態で、練習してきたことが全て発揮できた」とまず、謝辞を述べた「大会の参加、アメフトの振興、優勝と3つのメダルが取れた」と笑顔。「厳しい試合になると予想していた。オフェンス、デフェンス両方の頑張りで第4クォーターで追いつくことができた。最後のフィールドゴールは、スナップ、ホールドさえうまくいけばキックも決まると思っていました」とにこやかに試合を分析した。決勝点を決めたコフィン選手は「両チームともスキルと力が拮抗するいい試合だった。日本に良い選手がいることに感銘した」と話し、MVPを獲得したカスパーバウアー選手は「きょうのゲームは貴重な経験になる。他国のレベルが上がっているのに驚いた。アメリカはさらに強化しなければならない」と感想を述べた。
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一方、敗れた日本の阿部敏彰監督は「負けるとしたら、こういう形だと思ったがその通りになってしまった。チャンスが何度かあったがうまくいかなかった。こういう大会では緻密なゲーム運びでやらないと勝てない。追い込まれたところで最後の力が出せたのがアメリカとの差」と試合を振り返り、「アメリが世界一だとしたら、日本はアメリカに少し近づいた気がする。いつまでもアメリカにあこがれていてはダメで、勝つつもりでやらねばいけない」と話した。三度目のチームを率いた阿部監督は「今大会の日本監督をやったことがうれしい。アメリカは真剣に戦ってくれ、いい勉強をさせてもらい前に進むことができた。次の人が自信を持ってナショナルチームを作り戦ってもらいたい」と総括。DL脇坂靖生主将(43、松下電工インパルス)は「もうちょっとで(優勝に)手が届きそうだったので、本当に悔しい。体格以外は差を感じなかったが、その体格差から来る当たりのダメージが終盤で響いた」と唇を噛みしめていた。
トミー・ヴァイキング国際アメリカンフットボール連盟会長は「決勝戦は予想通りすばらしいエキサイテングな試合だった。1回目はマネージャー、2回目はディレクター。3回目は理事長として参加した。今回がもっともすばらしい大会だった。次回の開催地の公募はこれからで、2年後に決まるが8チームの参加を目ざしたい」と話した。
大会を迎えた阿部孝夫川崎市長は「神風が吹いて雨も止み、決勝戦を迎えることができた。延長戦でどちらが勝ってもおかしくない試合で、お客さんも喜んで盛り上がった。川崎はスポーツが盛んなまちだが、国際大会が開かれたのは今回が初めてで、今大会が果たした意味は大きい」と満足げ。「1000人を越えるボランティアのみなさんが雨の中でも協力してくれたことに感謝してます。そうしたことが準優勝につながった。これからも『アメフトは川崎』というまちづくりをしたい。来年はアジア音楽祭も行われるので、それに合わせ、まずお隣の韓国と交流大会ができるように働きかけることを検討したい」と述べた。
「申しわけありませんでした」とあいさつに来た阿部監督と握手し「いい試合だった。アメリがが初めて参加し、それに勝ってしまったら目標がなくなる。次はチャレンジャーとしてアメリカに挑戦して」と冗談を交じえて慰めていた。
初戦で2つのタッチダウンを決めた地元チーム富士通フロンティアーズ所属のWR米山晃嗣選手(80)は、「きょうはパスもあまり通らず残念だったが、世界には強い選手がたくさんいた。この大会の得たことを持ち帰り、秋からの社会人リーグに生かして頑張りたい」と話した。                             表彰式の後、日本選手は観客席で待っていた客のサインや写真撮影ににこやかに応じていた。その後チームメートや会社の同僚のお礼をのべたり、なかには子どもを抱き、すっかりパパの表情に戻った選手もいた。

写真左上=優勝を喜ぶアメリカ代表の選手たち 写真右下=MVPのカスパーバウアー選手にトロフィーを贈る阿部市長 写真左下=ヴァイキング理事長から優勝の金杯を贈られるアメリカ代表