「リサイクルパークあさお」焼却炉選定について、ことし4月に「川崎・ごみを考える市民連絡会」代表の飯田和子さんより寄せられた原稿を掲載します。
協働ですすめるごみ減量が課題
〜リサイクルパークあさおごみ焼却炉選定をめぐって 飯田和子(川崎・ごみを考える市民連絡会)
「市民団体がここまでもってきたのはすごいと感動している。」「国策に反対して市の考えを転換させるとはこういうことなのだと勇気づけられました。」
川崎市は、ごみ溶融を撤回し、市民の主張を取り入れて従来のストーカ炉と決定しました。この3月に説明会を開催。引き続き市民団体もこれまでの活動を報告しました。それを聞いた市民の方が話された言葉がこれです。この時、私の中に熱いものがこみ上げてきました。
現在、多摩区・麻生区のごみは、王禅寺処理センターに運ばれ処理されています。その建て替え計画をめぐって私たちは1997年3月から8年間にわたり川崎市とやりとりをしてきました。
建設計画のアセス・環境配慮方法書の段階で(2001年2月)、溶融固化施設(焼却炉がガス化溶融炉あるいは、ストーカ炉と焼却灰溶融の併設)を前提として計画していることがわかりました。ごみ溶融とは何だろうという基本から学習を始めました。
ガス化溶融炉とは、これまでのごみ焼却とは違って、1300度という高温状態でごみを溶かす炉です。そしてつぎのような問題点が分かりました。
第1に、安全性を問題視しているジャーナリスト津川敬さんは、ガス化溶融炉を「可燃ガス発生装置」といい、ガス漏れによる爆発の危険性を指摘しています。
第2に経済性から見ると高くつきます。ごみ質は変動が大きいので、補助燃料としてコークスや灯油が使われ運転コストが嵩み、耐火レンガの補修費もかかります。
第3に、ガス化溶融炉メーカーはダイオキシンが高温で無害化すると宣伝しましたが、それは間違った宣伝でした。ダイオキシンは排ガス冷却過程で再合成されるので、現にガス化溶融炉でもバグフィルター、活性炭、触媒などを付けています。付けなければダイオキシン対策は充分でないのです。
第4に、溶融でできたスラグは土木資材や路盤剤になるという触れ込みでしたが、実際には流通できない例を見ました。
第5に、ごみの減量化計画との関係です。今後は資源分別を推進し、ごみから資源を分けねばなりません。燃やすと高温を得られるプラスチックや紙を分別資源化すれば、ごみはカロリーの低い生ごみが残ります。分別推進の時代に溶融施設をつくって将来どうするのでしょう。しかし、国は、自治体の事情を考慮せず溶融施設のみに補助金を交付するという形で後押ししてきた、そのことが一番の問題点です。
このようにさまざま問題点があることが分かってきたので、私たちは炉の選定委員会に市民委員を入れてほしいと要望していきました。しかし、受け入れられないまま委員会はスタートしたので(2001年12月)、傍聴を続けました。奇妙なことに「傍聴を認める」という委員会規則があるにもかかわらず、第3回から傍聴すら認められなくなりました。これに納得できず、欠かさず室外に待機しました。
2002年12月、中間取りまとめでは分離式ガス化溶融炉が選定されましたが、期を同じくして分離式メーカーである三井造船の不正受注事件が報道されました。そこで、市民は傍聴を拒否されてきたので、選定委員会の密室会議で何が話されたか知るよしもない、疑惑に答える場、市民が同等に焼却方式を選ぶ場の設定を要請しました。
環境局はこれに答えて「市民団体と行政の検討会」を設置し、8ヶ月にわたって8回の会議を開催し、選定委員会の非公開扱いの資料公開を行いました。
2003年12月に選定委員会中間とりまとめと検討会報告の住民説明会が開催された会場では、ごみ減量の必要性やガス化溶融炉の危険性を危惧する意見が出されました。
一方、国では、焼却施設補助要件を見直し最終処分場の寿命が15年以上ある場合などは補助対象とすることにしました。川崎市はこれに該当し、従来炉でも補助されることになりました。2004年5月に、再開された選定委員会は、検討会や住民説明会の意見も考えて、従来炉を選定対象に追加して検討。しかも最終報告書では、市の循環型社会構築に係わる政策的な部分が大きいとして従来炉ともガス化溶融炉とも決めず、市に最終判断を委ねました。
川崎市は2005年2月、ストーカ炉に決めたことを記者発表。さらに報告会開催となり、あわせて市民団体も報告会を開催しました。
ストーカ炉を選んだことで、市は、ごみ減量施策のさらなる推進に取り組む必要があります。最終処分場を長持ちさせるために、焼却灰を溶融して容量を減らす方法ではなく、ごみそのものを減らす方法を選んだのです。具体的には、PETボトル以外のプラスチック容器包装や、ミックスペーパーの分別収集が未着手です。まずこれに取り組むことです。第2次廃棄物処理基本計画が策定されますが、その実効性が問われます。
これから減量化を進めるならば、現在4つある焼却場を3つに減らし、橘処理センターか堤根処理センターをなくすことも視野に入れていくべきと考えています。
ごみ問題は市民と直結しています。恩恵を被るのも市民、影響を受けるのも市民です。市民参加は不可欠です。そして情報を共有し、ごみ減量に向け協働で取り組みたいものです。
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