この風景に見覚えありませんか——半世紀前の狛江を描いた「丸山永畝(えいほ)スケッチ展 よみがえる狛江『村』の風景」(狛江郵便局・狛江のまちを考える会・NPO法人k-press共催)が狛江郵便局で10月20日まで開かれており、来場者から描かれた風景の場所などについての情報を集めている。
写真=和田卓巳狛江郵便局長(左)に絵の説明をする丸山さん夫妻
作品の内容は、富士を望む多摩川のほとり、広がる田畑に実る作物、雑木林に点在するかやぶき屋根の家々、小川で野菜を洗う人々など都市化の波が訪れる前の昭和20年代半ば田園地帯だった狛江の風景で、和とじの画帳に描いたスケッチ画を写真撮影し、はがき程度に縮小印刷して展示している。
絵を描いたのは1951年に狛江岩戸北に転居した日本画家・丸山永畝(本名・忠治郎、1886〜1962年)さん。丸山さんは、長野県上諏訪町(現・諏訪市)出身で、画家をめざして20歳で上京。花鳥画の大家・荒井寛畝に師事し、主に軸物、屏風、襖絵などの作品を手がけた。代表作としては1931年院展入選作「水禽」、昭和初期に描いた目黒雅叙園所蔵の「叢中」、郷里の諏訪法光寺の「梅園」などがある。
画帳は、丸山画伯と同居していた長男の督雄さん(86)が大切に保管・所蔵しており、戦前からのものも含め約300冊、作品の数は約2万点にのぼる。墨と絵の具で描いたスケッチは、日付や描いた場所などのメモも残されている。スケッチは、本画を描く時に必要となる素材の動植物や風景を記録するために描いた側面もあるが、当時の写真も少ないだけに、半世紀前の風景や生活を知る上でも貴重な資料になると、専門家からも注目を集めた。画帳本体は、まとめて保存するため、いまは世田谷区立郷土資料館に寄託されている。
同館では、これまでに狛江に住んでから以降の約8000枚を写真撮影して整理し、うち狛江市内を描いたものが1193枚あることが判明した。ことし2月に狛江駅前の「泉の森会館」で狛江市内を描いた分を初公開し、好評を呼んだが、会期中に見られなかった市民などからの希望で、狛江郵便局の協力でふたたび公開することになった。
9月20日から始まった今回の展覧会では、会期中数回に分け1回に約250点ずつ展示する。会場では、昔の狛江の地図を展示、描かれた風景を覚えている人にその場所に印を付けてもらったり、コメントを書いてもらうコーナーも設けており、描かれた場所を捜す作業も行う。
丸山督雄さんは「父の作品が、こうして日の目を浴びることになってうれしい。1回で終わらせてしまうのはもったいないので、いい機会をいただいた」と笑顔、和田卓巳局長は「懐かしい絵が多い。狛江を愛するたくさんの人に見てもらい郵便局が狛江の情報を発信できることになれば」と話している。
同展の問い合わせは電話03(3430)6617NPO法人k-press。
またNPO法人k-pressでは、丸山永畝スケッチ展を記念したポストカードを作成、狛江駅前の狛江ブックセンターとむいから民家園で販売している。
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