多摩水道橋下流の多摩川で8月29日、灯ろう流しが行われた。午後6時半過ぎから屋形船に積んだ約500基の灯ろうが次々と流され、静かな灯が川面を彩ると、訪れた人たちは涼しい風に秋の気配を感じながら、去りゆく夏を惜しむかのようにうっとりと水と光のページェントを楽しんでいた。
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灯ろう流しは、昨年までは、狛江市などが主催する花火大会と同じ日に開かれてきたが、今年は花火大会が中止されたため、一時は開催が危ぶまれた。しかし、夏の伝統行事の灯を絶やすわけにはいかないと、狛江市仏教会と市民が協力して実行委員会を結成、単独の開催にこぎつけた。
川岸で市内の6カ寺の僧りょが声をそろえて経を読むのに合わせて、故人の戒名などを記した高さ20数cmの紙製の灯ろうをぎっしりと積んで小田急線多摩川鉄橋付近にこぎ出した屋形船から、ろうそくに点火しながら20分ほどの間に次々と川面に流された。
灯ろうは、下流からの風に乗って上流に向かい、静かな川面にろうろくのゆらめきを映しながら漂う光景に、川岸の見物の市民からは「きれいね」というため息まじりの声があちこちから聞かれた。
昨年までは、花火大会に先がけて明るいうちに行われたこともあり、見物客の関心もいまひとつだったが、今回はあたりがすっかり暗くなったなかで催され、より光の美しさがきわだつことになった。
主催者側では「無事に開催できて良かった。来年以降は今後考えるが、もっと多くの人に知ってもらえるようPR方法などを工夫し、伝統の行事をできるだけ続けていきたい」と話している。