白鳥中1年生が自分たちで育てたダイズで豆腐づくり:食農教育の一貫

050219toufu1市民ボランティア記者・石井よし子(麻生市民館 社会教育指導員/里山フォーラムin麻生事務局)

2月4日(金)の午後、麻生区の白鳥中学校(鹿内利保校長)のあちらこちらで(調理室、教室、体育館で)大豆の甘い香りが漂っていた。1年生全員(166人)が、女子生徒も男子生徒も一緒になって「みんなが育てた大豆で豆腐づくり」に挑戦していた。
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麻生区の農家の人たちや事務局の職員と一緒に黒川の畑で2004年7月に種まきして育ててきた大豆だ。昨夏の猛暑を生き抜いた大豆。はたして豆腐になるのだろうか、とみんな一所懸命ひたすら作業を続ける。
前日から水に漬けておいた大豆がミキサーで汁(呉)になった。なべで煮て、さらしで漉(こ)して搾(しぼ)る。また鍋で煮て、にがりを入れて待つこと15分。プルプルになったところで穴を開けた牛乳パックの豆腐容器にいれる。水を切ってパックの蓋(ふた)を取るとしっかり固まっている。
050219toufu2作り始めて1時間半。できたてのほの温かい豆腐をお皿にのせて食べてみる。子どもたちはこわごわと少しずつ口に入れ始め、味や食感を確かめていた。子どもたちは「湯豆腐みたいだ」「私たちが作ったのだからまずいと思っていたけどおいしい」「味が濃いい」「苦い、堅い、それでもおいしい」「甘い」「嬉しいっていうか、感動だよね。最初からやって、畑の仕事もがんばったし」等々の感想だった。漉して残ったおからは何とマヨネーズ和えでいただく。塩コショウでもOK。皆さんもお試しあれ。意外にいける。

◆2004年6月からの体験学習

「みんなが育てた大豆で豆腐づくり」は、2004年度都市農業普及啓発支援事業“The Beans−お豆は畑のお肉−”として、川崎市の農業委員会(会長尾幡英世)と市立白鳥中学校が連携し、食農教育を展開してきたものの一貫で開催された。
食農教育は、川崎市が2003年から新たに始めた事業で、初年度は宮前区の平小学校で行われ、市内の農園の見学や市内産農産物の調理、試食をした。2年目の白鳥中学では、同年6月から中学1年生を対象に、総合的な学習の時間に大豆の栽培から加工までの一連の作業を通し「地域の環境−食糧・植生・農業」の理解を深めることを目的に行われた。
白鳥中学校区にある黒川の汁守神社下の立川昌沖さんの畑(約1800平方メートル)を借り、麻生区在住の8人の川崎市農業委員会、事務局の川崎市農業振興センター農地課の職員、 生徒、教師が協働し、6月から学習と体験が始まった。最初はエダマメのポット藩種、定植をし、大豆の藩種と続いた。8月にはエダマメの収穫。猛暑のなか大豆の中耕、除草をした。10月29日には大豆の収穫、12月3日には大豆を脱穀した。2月1日には大豆の選別。2月1日・2日・3日と豆腐作りの用具や道具の準備が続き、3日の12:00に大豆を水にひたし始めた。4日は女性農業担い手の会「あかね会」(持田あけみ会長)の会員12人来校し、指導にあたった。地元麻生区からは立川悦子さん、森そめ代、梶美恵子さんが参加。あかね会では、白鳥中の中西望介教諭(社会科)、工藤春美教諭(国語科)をはじめ教師と打ち合わせを重ね、横浜川崎地域農業改良普及センターの協力も得て、事前に試作を繰り返したそうである。ゲストティーチャー役の会員は母親のようにやさしく生徒たちに話しかけ、気を配り作業を進めていた。
体育館での閉校式では生徒からのお礼の言葉に続き、一年の担任の工藤教諭は「今とても幸せな気分だ。おいしいものを食べるにはたくさんの人の手がある」。あかね会の持田会長は「私たちが豆腐作りの試行錯誤ができたのも、皆さんのお蔭だと思っている。温かいお豆腐を食べさせたかった。おいしかったと聞いて嬉しい」。県農業会議佐藤さんは「ワインと豆腐は旅をさせてはいけない、という諺(ことわざ)がある。時間が経つとうまみアミノ酸や糖分も減っていく。だから川崎の野菜は川崎で食べていただきたい」農業振興課の大根田正義農業振興センター所長は「農業に力を入れている。麻生区は新鮮・安心・安い農産物が手に入るので、どんどん食べていただきたい」と話した。
 中学に入学して間もなくの一年生が、農業委員会、あかね会、農地課の職員、
そして何よりも教師に支えられて、白鳥中学校ならではの学びの場にいた。
教科学習の枠を超えて、麻生の大地があればこその、地元や周辺の農業者のおじさんやおばさんの暖かい気持ちと生徒たちの素直な心が通じ合っているようであった。