麻生区の古書店店主と顧客が文芸同人誌を創刊

041024川崎市麻生区の古書店経営者とその顧客が、10月1日に同人誌「Pegada (ペガーダ)」を創刊した。同誌は、小田急線百合ヶ丘駅前で古書店「アニマ書房」を経営する高石の春田道博さんとその顧客13人で作る文芸同人「アニマの会」が発行、400部印刷しアニマ書房のほか、有隣堂新百合丘店、大塚書店などで500円で販売している。
(写真=ペガーダを持つアニマ書房の春田さん)

アニマの会は、麻生区、多摩区、横浜市、厚木市に住む25歳から74歳の14人が参加、職業も学生、作家、会社員、文芸評論家、エッセイスト、画家とさまざまで、プロ、アマともいずれおとらぬ文学愛好家という。駅前の古書店が取り持つ縁で同人となったことから元大手出版社の編集者だった桜井信夫さん、画家の篠田泰藏さんをはじめ麻生区民が10人を占めている。
ポルトガル語で「足跡」を意味するこの同人誌は、A5判136ページで、創刊号は同人全員が書いた小説、詩、評論などを掲載、表紙は小説も発表した篠田さんが担当した。巻頭に「閉塞した時代になにを表現すべきか(中略)個々人の苦しい模索が続く状況のなかで、現代文学の変革を指向する者が集まり、表現の場を設けることにより、新しい文学の地平を切り開くことが可能になります(後略)」とアニマの会が目ざす理想と目的を掲げた宣言文を載せている。発行は年2回春・秋の予定で、次号は2005年4月。
掲載作品は、「汚泥の池」ほか3編の短編小説、詩「回想の海」1編、エッセイは大手出版社の編集者だったころの思い出を書いた「夏の日の挽歌、松本清張のことなど」、無声映画時代からの日本映画ガイド「後追い世代の日本映画ニュー・スタンダード(連載の予定)」ほか2編、評論は「谷崎にとっての女性」、「伊藤整の『日本文壇史』を巡って」2編で、テーマも素材も多岐にわたる。
事務局の春田さんは、1960年代に詩や評論を書き文芸同人誌に作品を発表、現代詩で受賞経験も持っていたが、1970年に筆を折り会社員になった。定年少し前の1999年、創業75年の勤め先が倒産。約40年住む麻生区で後の世代に日本文化を伝える仕事をしたいと、2000年11月に文学、歴史、思想哲学などの書籍を中心とする古書店を開業した。顧客とのコミニュケーションを深め、文化の継承をと毎月A4判両面刷りの通信を発行、常連客のエッセイや評論などを掲載している。こうしたことから昨年2、3人の顧客から同人誌の発行を持ちかけられ、店の経営理念と一致するところが多いと顧客に呼びかけ、5月に同人を発足させた。春田さん自身も、35年ぶりに創作した詩を載せている。創刊号は、篠田さんら5人が編集を担当、11月に初めて掲載作品の合評会を行う。春・秋の年2回発行の予定で、次号は2005年4月。
春田さんは「麻生区の周辺は、作家、画家も多く住んでおり文化的レベルが高く、ペガータにもプロが参加している。作品を書くというのは個人的な行為で、ともすれば表現が独善的になることもあるが、同人誌では互いに作品を批判し合って質を高めることになる。将来はこのなかから新たな作家や評論家が育つようにしたい」と意気盛んだ。
活字離れの時代に、固い内容の同人誌を発行するのは大変なことだが、メンバーらペガーダの創刊で文学に対する関心を深め、地域の文化、芸術活動が盛んになることも目的にしており、今後は同人も募るほか、一般読者を作品も有料で掲載することも検討している。
問い合わせは電話044(953)2050アニマ書房。